2021年の自分のキーボード関連を振り返る

今年もあとわずか。大掃除をしないといけないけれど、冷えた足を温める&現実逃避として自分のツイートをもとに2021年の自分の自作キーボード活動を雑に振り返ってみます。

 

2021年の初めは何してた?

1月は以前自作したキーボードにUSB-Aのポートをつけたりしてる。

あとはスイッチプレートに銅を試したり、金属プレートを傷つけないようにスイッチプラーを作ってみたりしていたようだ。プレートを傷つけないスイッチプラーほんとに欲しい。

 

ステンレス鏡面ケースのガスケットマウントキーボード

2月に入ると設計を始めている。もともと自作キーボードを始めたのは、テンキーレスからさらに使わないキーを除いた実用的なキーボードを作りたかったからなのだが、この時期あたりから加えて美観、打鍵音、打鍵感にこだわるようになっている。前作でガスケットマウントが自分の好みだと感じたので、スイッチプレートは前作と共通にして再利用し、次に挙げる前作の不満点を解消しようと試みた。

・ケース上面が木製だと音が響いてしまう

・PCBにJSTコネクタつけたら打鍵時にケース底面に当たる

・金属ケースを板と角材を組み合わせて作ったけどねじがたくさんで見た目がいまいち

・余分なキーを除いて省スペース化したいのにケースは余白大き目で逆行している

 

2月から設計を始めて3月ごろから組み立て始める。

アクリル積層で側面を作り、その上下にステンレスの板をつける。上面はねじ穴を作りたくなかったので、接着剤でつけた。

 

途中、USB-Cレセプタクル基板が干渉したり、その解消のために新たに作ったUSB-Cレセプタクル基板はD-とD+のシルクが逆になっているなど、すんなりと完成とはいかなかった。

ただし最終的にはケース寸法はかなりギリギリを攻めることができたし、ケース上面とキーキャップの高さの関係は完璧。そしてケース上面にねじがない鏡面が美しいキーボードを完成させることができた。

このキーボードは見た目もよいし打鍵音も抑えられて静かなのでエンドゲームかと思っていたが…。

 

初めての40%キーボード

かなり満足のいくキーボードを完成させたにもかかわらず、すぐに次のキーボードの構想を考え始めている。ちょっと病的。

 

なんだかんだで40%サイズのキーボードを作ることに。最近はケースの設計が面倒に感じていたので市販されているケースを利用しようと考えたが、結局アクリルを箱組して自作することにした。5月から実際に組み立て始める。加えて7月は自家昇華印刷を行うための熱転写機を自作した。これによりこれまでうまくできなかったキーキャップ天面への転写をとてもきれいにできるようになった。

ケースやキーキャップの出来には非常に満足したのだが、アルファベット以外の打鍵がスムーズにできず、特に数字を打つのにストレスを感じるようになる。結局、作ったけどほとんど使わずに飾り状態になってしまっている。ただ、このキーボードで挑戦したアクリル箱組によるケース作成は自分にとってはいい発見だった。

 

ブログを書き始める

40%キーボードを製作している時期からブログを書き始める。今年書いた記事を見返してみると、自作キーボード沼にどっぷりはまった人しか読まない記事しか書いていない…。12月にアクセス解析を見てみると、人々の興味はやっぱりキーキャップが中心のようだ。

 

打鍵音の解析

だんだん打鍵音にこだわるようになってきたので、8月の夏休み中に打鍵音の周波数解析を試みる。が、結局打鍵音なんもわからん。はっきりとわかったことは数kHzの周波数帯を抑えることができると自分の好みの打鍵音になる。

 

プレートレスPCBガスケットマウントキーボード

打鍵音が気になり始めていた時にEQUINOX XLやTHERA75のGBが始まる。これらに触発され、プレートレスPCBガスケットマウントのキーボードを自作した。8月に設計を開始して9月の終わりから組み立て始め、およそ一か月かけて完成。

6Uのスペースを初めて使ってみようと思ったのに、PCBの穴位置がずれて分割にせざるを得なかったり、注文したスイッチの半分以上が別のものだったり、5mm厚のフォームの打鍵音への効果がほとんどなかったりと、いろいろと思い通りにはいかなかった。

 

ただこのスイッチの混じりについては、むしろProではないGateron Milky Yellowが自分の好みの打鍵音だったことがわかった。こういうセレンディピティはうれしい。このスイッチはアルファベット以外のキーに配置していて、MDA Profileのキーキャップをつけてキーボードを使用しているが、特に数字行が自分の求めている打鍵音のような気がする。キーキャップは背が高めのほうが自分の好みの音になるみたい。このことがわかったので今後SAやMT3くらい背の高いキーキャップしか買わないことをここで決心する。(でもMDA Future Suzuriはすごい気になっている…)

 

打鍵音の点からProではないGateron Milky Yellowを手に入れたいのだが、どこで購入できるのかわからず迷走中。Gateron yellow、やっぱり難しすぎる…。

 

KEEB_PDへの参加

毎回は無理だけど、ちょくちょくKEEB_PDに参加。わが住まいは朝日が気持ちよく差し込むので、天気のいい朝に撮影していたが、KEEB_PD主催者のにるぽさんの記事でライティング方法を学んでから、雰囲気(だけ)のある写真を狙って撮れるようになった。

nillpo.hatenablog.com

これまで写真撮るのは何とも思っていなかったが、これをきっかけに撮影を面白いと感じるようになった。ただ撮るのはどうせキーボードだけなので、お金が無限に溶けていくカメラは買わないと心に決めている。

 

今年自分が投稿した写真の中で一番のお気に入りはコレ。

この錯覚感が気に入っている。キーボードの写真はどうしても静的な印象になってしまうのだが、動的な要素を入れることができたのではないかと思う。

 

実際にはもちろんケースを液化しているわけではない。もともとのキーボードはこれ。

 

どちらも撮影方法は同じ。真っ暗な部屋の中でPCのディスプレイに画像を映し、それでライティングするとともに画面が鏡面のキーボードケースに映るように撮る。水の画像のほうは良い感じになる位置・角度を探すのに苦労した。この方法はディスプレイに表示する画像を変えることでいろんな表情になるので面白い。鏡面ケースはいいぞ。

 

2022年はどんなキーボードをつくろうか?

振り返ってみると2021年は3つもキーボードを設計・作成している。まあ世の中にはもっと速いペースで設計から頒布までやっている人もいますが(人ではないのかもしれない)。今年作った自作キーボードは、それまでの経験の積み重ね+新しい試みが上手くいったことによってどれも満足度が高い。その分、新しくキーボードを自作するモチベーションがちょっと下がり気味かもしれない。まあでも打鍵音についてはまだ改善の余地があると思っているので、来年はエンドゲームに到達したいですね。さて、大掃除しよ。

 

この記事は自作したプレートレスPCBガスケットマウントキーボードrelief64で書きました。

プレートレスPCBガスケットマウント自作キーボードの製作(8)

今回はフォームによる打鍵音の変化についての記事です。

5mm厚フォームの導入

今回製作した自作キーボードrelief64は、スイッチプレートがない分だけ厚いフォームを入れることができる。これにより大きな吸音効果が見込めて落ち着いた打鍵音が得られるのではないかというのがもともとこのキーボードを作って試したい事の一つだった。実際このキーボードをつくるきっかけになったプレートレスのThera75は打鍵動画を見ると結構自分好みの音になっていて、これが5mmの厚いフォームによる効果ではないかと考えていたからだ。

 

ということで5mm厚のPoronフォームを入れる。Poronシートをニッパーでカットしてスイッチの穴をあけていく。切りづらいので見た目はいまいちだが、最終的には見えないところなので気にしない。この作業はハサミよりはニッパーのほうがやりやすい。ただしこの厚みとこの穴の数はだいぶ苦行。穴をあけ終わった時には右手の中指にまめが2個生まれていた。

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5mm厚Poronフォームのスイッチ穴をニッパーでカット

カットしたフォームをキーボードに仕込んだのが下の写真。切り口は見えないのでそんなに見た目は悪くない。

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フォームのインストール

スタビライザーの辺りも頑張ってかなり隙間を少なくすることができた。フォームをミチミチに詰めているため、場所によってはスイッチが水平方向に押されていて、キーキャップをつけると打鍵時に隣のキーキャップと少しあたるものがあった。これはさらにフォームをカットして調整。

打鍵音へのフォームの効果

さて、フォームを詰めたので打鍵音の周波数解析をしてみる。解析方法は以前行ったこれと同じやり方。この時の使用したキーキャップはSignature PlasticのSA-Pプロファイル。下のグラフはGateron Pro yellow milkyをつけたHキーについて、真鍮ウェイトとフォームを組み合わせたときの周波数スペクトルの比較。

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Hキー(Gateron Pro yellow milky)の打鍵音の周波数スペクトルの比較

 

この結果は自分にとってはかなりショックだった。つまりウェイトを入れようが、フォームを入れようがほとんど変わらない。でも体感ではフォームを入れたほうが底打ち時のカツカツとした打鍵音の鋭さがまろやかになった感じがする(文字で表現するのが難しい)。

 

まてよ、自分の打鍵時の強さによって音は変わるのでは、と思い始めたのでこの違いを調べてみた。打鍵の強さを弱(底打ち音がぎりぎりするかしないか程度)、中(普段の打鍵の強さくらいのつもり)、強(強めの打鍵)に対して周波数スペクトルがどのように変わるかを調べてみた。下の図はウェイトとフォームをつけた状態での打鍵の強さによる周波数スペクトルの変化。

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Hキー(Gateron Pro yellow milky)の打鍵の強さを変えたときの周波数スペクトルの比較

 

当たり前だが打鍵の強さによって周波数スペクトルの強度が変わる。数kHzの周波数帯がおそらくスイッチやその底打ちの音だと考えられるが、この周波数帯では打鍵の強さによって10dBくらい変化する。これに加えてスペクトル分布の形も変わっていて、つまり音色が変わっていることになる。弱と中では特に6-10kHzの領域で大きく変わっていて、これが底打ちのカツカツ音に対応しているのか?強く打鍵すると10kHzを超えたところも現れ始める。10dBくらい変化すると打鍵音の違いがはっきり耳でわかるレベルという印象。

 

強く打鍵したときのウェイトやフォームの効果を比較したのが下図。打鍵が強い場合には打鍵力中よりも違いがなくなる。ただし10kHzを超えたところではフォームが効いているようにも見える。

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Hキー(Gateron Pro yellow milky)の強めに打鍵したときの周波数スペクトルの比較

 

別のキーについても一応調べてみる。ProじゃないGateon yellow milkyがついている「;」キーについても同様の解析を行った。まず下の図は打鍵の強さによるスペクトルの違い。

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;キー(Gateron yellow milky)の打鍵の強さを変えたときの周波数スペクトルの比較

数kHzの周波数帯はHのキーと同じ傾向。一方10kHzを超えたところではあまり大きく変わらない。体感としてはGateron Pro yellow milkyのほうが底打ち音が大きく、カツカツ音と軽快に響く。この音(の一部?)がこの周波数帯に現れているということなのだろうか?

 

下の2つの図はウェイトとフォームの効果を;キー(Gateron yellow milky)について打鍵力中と強で比較したもの。

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;キー(Gateron yellow milky)の周波数スペクトルの比較(打鍵の強さ中ぐらい)

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;キー(Gateron yellow milky)の周波数スペクトルの比較(打鍵の強め)

こちらも大きな違いは見られない。Hキーではフォームが10kHzを超えたところで効果があるように見えたが、;キーではそのような傾向は見えない。

 

最後に複数のキーについての打鍵音を調べるために、タイピングテスト時の打鍵音を15秒程度録音して比較した。下のグラフがその結果。

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タイピングしたときの打鍵音の周波数スペクトルの比較

ほぼ同じ…。一応Hキー単独で録音した場合とタイピングした場合のスペクトルの比較もしてみる。

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Hキー単体(赤)の場合とタイピングしたとき(紫)のスペクトルの比較

多少形が違うがほぼ同じといっていいだろう。

 

以上から

  • 打鍵の強さでスペクトルは変化するが、録音時の打鍵の強さはわりと制御できていてばらつきは少なそう
  • タイピング時の打鍵音をHキーで代表させてもそんなに悪くなさそう

ということが言えるだろう。5mm厚のフォームが大きな効果を発揮すると期待していたが、スペクトルにはほとんど違いが見えず残念な結果となった。ただ体感としてはフォームを入れると少し音が変わったように聞こえるので、マイクが高音を拾えていないことが原因だと思う。録音した音を再生すると実際に比べてこもったような音になっているので、やっぱりマイクの高音に対する感度が足りていない気がする。まあでも耳で聞いた実際の打鍵音が劇的に変わったようには感じなかったので、やっぱり5mm厚フォームの効果は思っていたほど大きくはないようだ。

 

さらにクッションシートを追加

苦労してフォームに穴をあけて入れた割には効果が薄くて悔しかったので、家に余っていた3mm厚の衝撃吸収シートをPCBと底板の間に入れてみた。ホームセンターで購入したこれ。黄色の部分がアクリル発泡体で片面の黒いものはマーバス加工された生地というものでサラサラした手触り。PCB側は多少凹凸があるので黄色の柔らかいアクリル発泡体面をPCB側にして入れた。

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衝撃吸収シート(真鍮ウェイトがもう汚れてきている…)
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衝撃吸収シートをケース内に入れた状態

3mmの厚さはたまたまだけど丁度よかった。写真で見えるように、黄色のウレタン発泡体の部分がほとんど潰れていない状態になっているので、打鍵感の柔らかさをほとんど損なわないはず。

 

このシートを入れたら明らかに打鍵音が変化した!体感では自分の目指しているコトコト音に近づいた。これは周波数スペクトルにもはっきりとした違いとして現れる。下図はPCBの下にシートを入れた場合(foam foam weight middle)と入れない場合(foam weight middle)の打鍵の強さ中での比較。

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追加クッション材を入れた場合のHキーの打鍵音の周波数スペクトルの比較

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追加クッション材を入れた場合の;キーの打鍵音の周波数スペクトルの比較

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タイピング音のスペクトルの比較

1キー単体で調べた結果では数kHzの音が低減され、代わりに数100Hzの音が現れた。空間を埋めたことによって音がケース内で響かなくなったということなのだろうか?数100Hzが増えたのは底板に振動が伝わるようになったのか?でもタイピングの打鍵音の比較では、数kHzの周波数帯にはほとんど違いがみられない。うーん、打鍵音わからん…。

 

打鍵音についての総評

打鍵音はフォームを入れると体感では変化している。もともと底打ち音がカツカツとした軽快で鋭い音(ただしステムのセンターポール長めのスイッチに比べれば控えめ)だったのが、フォームを入れると多少マイルドな音色に変わっている。YoutubeにあるThera75の打鍵音に結構近いと思う(個人の感想です)。

 

最も効果が高かったのは一番苦労していないPCBと底板の間に入れた衝撃吸収シート。フォームによる吸音が重要だと思っていたが、それよりも共鳴箱となっていたケース内部の空間を埋めるほうが重要なポイントということな気がする。だとするとガスケット受けの横の空間も埋めると音が変わるかもしれない。フォームのように吸音素材でなくても単に埋めるだけでもいいのかもしれない。またケース内部の空間を埋める割合を変えることによって好みの音に整音できるのかもしれない。

 

今作のrelief64というプレートレスキーボードの打鍵音を決めている主な要因は、底打ち時にスイッチ、PCBが鳴らしている音だと考えられる。これはカツカツと響く軽快な音なのでPCBを使わないでハンドワイヤーすると自分の好みの落ち着いた音にできるような気がする。この場合スイッチ位置を固定するスイッチプレートが必要となるが、硬めの(といってもPCBに比べて相対的には柔らかい)フォーム、あるいはゴムなどでスイッチを固定してハンドワイヤーすると究極のコトコト音にできるのではないだろうか。

 

しかし何回キーボードを作っても「打鍵音完全に理解した!」にならない。オーディオというのは底なしの沼なんだろうなーと思うのでした。この自作したrelief64というキーボードについて試したことはだいたい書いたつもり。何か新しい発見があったらまた記事を書くかもしれません。

プレートレスPCBガスケットマウント自作キーボードの製作(7)

今回は作成した自作キーボードの打鍵感・打鍵音の評価についての記事です。

フォースカーブの測定

今回のキーボードはスイッチプレートがない分かなり打鍵感が柔らかい。これを客観的に確かめるため、自作したフォースカーブ測定機を使ってキーボードにスイッチをつけた状態でフォースカーブを測定してみる。下図は今回製作したプレートレスPCBガスケットマウントのrelief64と過去に製作したキーボードの比較。測定したキーは矢印キーでスイッチはどちらもGateron yellow milky (proではないやつ)。relief64だけはPCBにはんだ付けされているのでスイッチ個体が異なる。

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複数のキーボードのフォースカーブの比較

フォースカーブ測定機専用のアクリル製のスイッチテスターやアクリルトップマウントの自作キーボードchex71は押し下げ切った後の荷重が急激に上昇する。これに比べてガスケットマウントの2つはそこの勾配が少し緩やかになっている。今作のrelief64は以前作ったガスケットマウントのchex71よりも緩やかになっている。

 

relief64をタイピングするとPCBがバインバイン振動しているのを感じることができる。まあでもこの表現は大げさかもしれない。指でゆっくりと押すと確かにグッと沈んで柔らかいことは感じることができるのだが、タイピングの速度でキーを軽く押しても大きく沈むわけではない。実際フォースカーブは底打ちの部分以外は同じになっているので、ある程度強く打鍵する場合に底打ちの柔らかさを感じることになっているみたい。

 

さらに柔らかくするならPCBの厚さを1.6mmよりも薄くすればよい。ただしその場合は底板とたわんだPCBがあたらないように注意する必要がある。あるいはガスケットのフォームの面積を小さくすると柔らかくすることができる。

 

真鍮ウェイトの加工・取り付け

今作のキーボードの底板はアクリル3mm厚でそれほど厚いわけではないので、ここが振動して音が響くことがあり得る。底板の防振のために真鍮製のウェイトをつけて違いを見てみる。真鍮ウェイト用の板材はモノタロウで調達。切りっぱなしの真鍮板に固定用のM3タップ穴をあける。穴をあけたら面取りを行い、やすりでやすった後にピカールケアーで磨いて仕上げる。

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真鍮ウェイトのタップ穴加工と面取り・磨き

出来上がった真鍮ウェイトを底板に固定する。やっぱりウェイトをつけるとテンション上がる。

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真鍮製ウェイトの取り付け

キーボードの重量をチェック。ウェイト取付前は687.5g。これまで自分が作った自作キーボードの中でもかなり軽いほうであったが、ウェイト取付後は重量が1225gに増加。これくらいだと片手で無理せず持てて重すぎず軽すぎずの重量となるので普段使いには程良い気がする。2kgを超えてくるとどっしりしてかなり安定する一方、重いから少し扱いづらい。

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真鍮ウェイト取付前後の重量

真鍮ウェイトの打鍵音への効果

真鍮ウェイトによってどのように打鍵音が変わるかを周波数解析してみた。録音方法と解析方法は以前に書いたこの記事と同様。

kgnwsknt-chef.hatenablog.com

 

スイッチがGateron Pro yellow milkyとProでないyellow milkyの2種類あるので、それらが取り付けてあるHキー(Gateron pro yellow milky)と;キー(Gateron yellow milky)について比較を行った。下図は真鍮ウェイトの有無による周波数スペクトルの違いをそれぞれのキーについて比較したもの。キーキャップはSignature PlasticのSA-Pプロファイルをつけて測定を行った。

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Hキーの周波数スペクトル、真鍮ウェイトの有無による違い

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;キーの周波数スペクトル、真鍮ウェイトの有無による違い

結論として真鍮ウェイトの効果はほとんど見られない。;キーについては5-8kHzが低減しているように見えるが、これくらいの違いは打鍵時の強弱で変わる気がする。むしろこの結果は測定の再現性が良いことを示しているかも。だとしたら自分の打鍵力のコントロールを褒めてあげたいところだが…。どちらのキーも10kHzを超えたところのピークが低減しているが、耳で聞いた感じでは違いは判らなかった。

 

ウェイトは主に底板の振動を抑える役割だと考えられるが、今作のキーボードでは他が音の主成分を担っていると思われる。おそらくPCBとスイッチが打鍵音の主な要因であろう。底板はこれらとはフォームによってアイソレートされているので、底板はほとんど振動しないということだろうか?この考えが正しければ、ウェイトはボトムマウントの場合に特に効果を発揮するような気がする。プレートレスPCBガスケットマウントの打鍵音を低減させるためにはまずスイッチ・PCBの音を低減させる必要がありそうだ。

 

次の記事ではフォームによる打鍵音の変化について書く予定です。

プレートレスPCBガスケットマウント自作キーボードの製作(6)

今回はスイッチをつけてキーボード完成までの記事です。

ガスケット(クッション材)の取り付け

PCBのタブにクッション材となるフォームをつける。タブの下面側は打鍵の衝撃を受けることになるので、できるだけ厚くして柔らかくしたい。そこで厚めの5mm厚のPoronシート(L24)を両面テープで貼り付ける。

 

タブの上面側フォームはケースに合わせて厚さを調整。ケースに入れて底板で挟んだ時にわずかにフォームがつぶれる程度にしたかったので、現物を見ながら最終的に1mm厚のフォームを2枚重ねた。さらにケースのガスケット受けの側面に1mm厚のフォームを貼っておく。ただ、ここは全然当たっていないので、ぎりぎり当たるくらい厚くするほうが水平位置がずれ難くなって良いかもしれない。

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PCBにガスケットのフォームをつける

 

フォームの幅はガスケットタブの幅に合わせたが、これは最適ではないかもしれない。フォームで衝撃吸収させる目的であれば、よくあるガスケットマウントのように幅の広いガスケットが良さそうな気がする。一方で打鍵感をソフトにしたいとか、ケースにPCBの振動をなるべく伝えないということであれば、Equinox XLのようにガスケットの幅を狭くしてケースとの接触面積を減らした方が良さそうな気もする。

 

後者の狙いの場合にはガスケットが硬すぎると結局PCBの弾性で打鍵感が決まってしまうので、よりソフトな打鍵感を目指すならPCBの変形の弾性よりもガスケットを柔らかくする必要があるだろう。現在の状態でもだいぶ柔らかいが、フォームの幅を狭くすればさらにソフトにすることができるはず。とりあえずこれで試してみて、必要があればフォームの幅を狭くしてみよう(面倒だからやらなさそうだけれど)。

 

しかしブログにこんなタイトルをつけておいて言うのもなんだが、ガスケットという呼び方には違和感がある。ガスケットは本来気密性を保つためのシールに使われる言葉だと思うが、キーボードにおけるガスケットは気密性がない。Oリングだったらわからなくもないけれど。まあでもガスケットマウントという言葉がこれだけ定着してしまっているので、この呼称はこのまま使われるのだろう。

 

キースイッチのルブ時に問題発覚

何種類かのスイッチを試してみて、Gateron Pro yellow milkyをつけることにした。$2.5/10個という価格ながらかなり滑らか。コスパ最強ではないだろうか。Cap yellow V2も滑らかだったが、バネを変えたりフランケンスイッチをやろうと思ったら、標準的なハウジング+ステム形状が良いかなと思ったので避けた。

 

スイッチをPCBにはんだづけする前にもちろんルブを行う。スイッチ分解してグリース塗るとか頭おかしいのではと思っていた頃がもはや懐かしい。Krytox 205 GPL g0で1つずつルブしていたのだが、どうもカサカサが目立つ個体がいくつもある。何だろうと思って調べていたら、どうも2種類のスイッチが混じっている。下の写真は比べたもの。あなたは違いがわかりますか?

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2種類のスイッチが混じっている!

ステムのセンターポール先端の形状が異なる。フラットなのがGateron Pro yellow、もう片方はProじゃないGateron yellow milkyだと思われる。こちらはファクトリールブされてなかったので、それでカサカサしたわけだ。我ながらこんなんよく気付いたもんだと思う。一旦気づくと、ステムの色に違いがあることもわかってくる。Proは黄色が濃く、そうでないほうは色が若干薄い。

 

色の違いに気づくことができれば、わざわざ分解しなくても簡単に分類できる。スイッチ選定用として試しに10個購入した以外に、たまたま見つけた送料が安かった($5)別のところから追加で60個購入したのだが、この60個のうち38個がProではないものだった…。販売元にメールしたらすぐに38個分返金してくれたけど、半分以上も違うんだけど?というモヤモヤはある。まあ半額以下でスイッチが購入できたし、考えてもいなかった別のスイッチも体験出来てラッキーと思うことにしておく。

 

Proでないほうもルブすれば悪くないが、ルブしてもカサカサ感が若干残る個体が多く、滑らかさではProに軍配があがる。そこで使用頻度の高いアルファベットのキーにはProを使用し、残りはProじゃないものにする。

 

スイッチパッドの取り付け

今回のキーボードのメインテーマの一つは打鍵音なので、遊舎工房で購入したKBDfans Switch Padsを取り付けてみる。打鍵音に変化を与えることが期待されるもので、スイッチプレートがない場合は特に効きそうな気がする。一応どれくらい効果があるのか調べてみた。真ん中のJの位置の1キーだけ(はんだづけせずに)嵌めて打鍵音を録音し、以前やった周波数解析をやってみた。

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打鍵音の録音

 

下図はスイッチパッドをつけない場合とつけた場合の周波数スペクトルの比較。はっきり言って違いはほとんど見られない。スイッチパッドを入れたほうが若干音が低減されているようにも見えなくもないが、このレベルだと打鍵の力加減の違いの可能性もある。少なくとも自分の耳では打鍵音の違いは判らなかった。でもまあせっかくなので一応つけておくことにした。

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スイッチパッドの有無での周波数スペクトルの比較

 

スイッチパッドをつけることにしたものの、たくさん取り付けるのはなかなか面倒な作業。直接PCBに貼り付けようとすると位置がずれるので、まずスイッチパッドの穴にスイッチのピンを通し、パッドとスイッチを一緒にPCBに挿してパッドをPCBに貼り付けた。これで位置合わせは完璧なのだが数が多いので手間がかかる。キリの良い60枚を貼って一部は面倒になったこともあって省略。これ逆にスイッチ側に貼るほうが実は効果があったりしないだろうか?(試してない。あ、ピンの穴位置が合わないか。)

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(左)スイッチパッドをPCBに貼り付ける前に穴にスイッチのピンを通す
(右)PCBにスイッチパッドを取り付けた

 

スタビライザーの取り付け

次はスタビライザー。使用したスタビライザーはDUROCK V2のスクリューインタイプを使用し、KDBfansのスタビライザーフォームをPCBに貼る。DUROCKのスタビライザーに3Uのワイヤーはないので、遊舎工房で販売している3U用のワイヤーを組み合わせる。

 

スタビライザーの調整がうまくないとカチャカチャ音が鳴ってしまい、どんなに良いケース、スイッチを使っても台無しになってしまう。特にスペースキーは使用頻度が高いので絶対に妥協したくないところ。最近はこのYoutubeのModをやっている。これでたいてい上手くいく。

www.youtube.com

 

苦戦したのは3Uのワイヤを組み合わせたスタビライザー。はじめはバンドエイドを貼ってルブせずにPCBに取り付けて試してみるのだが、この3Uのとこだけカチャカチャしてしまう。粘り強く調べた結果、どうも3Uのワイヤーとの相性が良くないみたい。PCBに取り付けた状態でワイヤーをグリグリすると少しワイヤーが前後に動く。ワイヤーを咥えている部分に若干遊びがあるみたい。一方この遊びは他の2Uのスタビライザーでは見られない。ノギスで3UのワイヤーとDUROCKのやつの太さを測ったらどちらも1.60mmで同じだったが、0.05mm未満の違いなのか場所によって径が違うのか、はたまたスタビライザーのハウジングの個体差なのか…。

 

どうにかこの遊びを無くすことができれば改善するはず。そこでワイヤーを咥えている部分をピンセットで押さえながらドライヤーで熱して少し変形させるというのを試みた。はじめワイヤーをつけない状態で変形させたらワイヤーを嵌められなくなってしまった。変形させるのはワイヤーを通した状態で行う必要がある。変形させたらワイヤーを外したくないので、ルブしてスタビライザーをPCBに取り付け、その状態でドライヤーで熱して変形させた。結果として悪くない感じになった。ルブが効いているのかもしれないが、ワイヤーを咥えている部分に遊びがある場合は熱して変形させるのはありかもしれない。

 

スイッチのはんだ付け

スタビライザーが終わったら、あとは黙々と残りのスイッチをはんだ付けするだけ。ProじゃないGateron yellow milkyはどうも固定ピンが細めでPCBにはめてもゆるゆるなので、しっかり奥まで挿してあるかどうか、曲がって挿さっていないかを気にしながら1個ずつ丁寧にはんだ付けをする。Twitterで片側のピンだけはんだ付けするとよいと教わったので、まずは片側の電極ピン(太いしっかりしたほう)だけはんだ付けし、曲がったりしていないことを確認したらもう片方のピンをはんだ付けする。横から眺めるときれいにそろっているかどうかを確認することができる。

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横から見てスイッチがずれていないことを確認

 

ついに完成!

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キーキャップをつけて完成!

DROPで購入したbiip MT3 Extended 2048のキーキャップを嵌めてついに完成!大きなミスもなく良い感じに仕上がった。右上の黒マットのブロッカープレートは手抜きをして両面テープで固定しているだけなので何とかしたい。手前のアルミ板は鏡面にしたかった部分だが、きれいな鏡面にはならずに鈍い感じ。まあでもこういうものだと思えば悪くない。鏡面って写真撮るの難しいし。

 

ケースは100点満点とはいかないまでも結構満足度は高い。底板とケースの嵌め合い具合、キーキャップとケースの高さの関係や水平方向の隙間など、どの寸法もちょうど良い感じになったのでとても嬉しい。アクリルは結構光を透過するので、上面のアクリル板の裏にLEDを仕込むとぼやっと光って良さそう。まあ自分は光らせないけれど。

 

次の記事では打鍵感を評価するためのフォースカーブ測定や真鍮製ウェイトについて書く予定です。

 

プレートレスPCBガスケットマウント自作キーボードの製作(5)

今回はケースの製作の続きです。

ケースアルミ板の接着

ガスケット受けを隠すための上面手前側のアルミ板の接着。アルミ板の切断はそれほど精度が出ていなくて少し長かったので、やすりで長さを整え、さらに面取りを行う。やすりがけをしてピカールケアーで磨いたら、中性洗剤で良く洗っていよいよ接着。

 

アルミ板はスコッチ 超強力接着剤 プレミアゴールド スーパー多用途2で接着した。接着剤がはみ出ると少し不格好になるので、外側にはあまり接着剤をつけないようにしたのだが、少しはみ出てしまった…。接着剤を塗ったら接着面を合わせてクランプで固定。この状態で一日放置。

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アルミ板の接着

接着完了後、仮止めのテープを外して確認。まあまあの出来。下の写真のように少しだけ浮いて隙間が空いてしまったのが残念。接着剤の粘度が高かったせいかもしれない。もっとサラッとしたものならもう少し合わせやすいかも。

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接着面に少し隙間が空いてしまった

箱になったので鋭い角をやすりで面取りしてピカールケアーで仕上げ。これでようやく指を切る心配がなくなる。

 

ブロッカープレートの固定

今回製作しているキーボードは65%サイズだが、よくある65%を作るのは面白くないということから右上の4キー分はキーを配置せずにブロッカープレートを付ける。このプレートとして黒マットとマリンブルーのアクリル板を調達しておいたが、サラッとした感じの黒マットをつけることにした。どうやって固定するかちゃんと設計段階で詰めていなかったが、とりあえず一時的にアルミアングルに両面テープをつける。ここにOLEDをつける、あるいはキーを配置して65%配列にするという可能性を捨てるのであれば、アクリル接着剤でプレートをしっかり固定すればいいのだが、結局そのオプションについて未練タラタラなのでとりあえずこれでしばらく使用してみる。

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ブロッカープレートの固定

 

ケース底板

残りはケースの底板。こちらはねじ穴をすでに加工してもらっているのでほとんどやることはない。チルトをつけるためにKBDfansで販売されている足をつけるのだが、これはM4の皿ねじなので、皿モミ加工を行う。底面手前側には遊舎工房で調達したウレタンクッションをつける。

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底板の透明アクリルとアルミ足

 

ケースが完成!

底板をねじ止めしてケースが完成。スイッチのついていないPCBを一時的に入れて組み立てたのが下の写真。

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ケースの仮組み

底板の寸法はケースの四角の内寸よりも少し小さくしないと嵌らないor取れなくなるのだが、自分の接着の精度がわからないのでどれくらい底板をちいさくすればいいのか迷ったのだが、結果として各辺-0.2mmの寸法でばっちりだった。これはかなりうれしい。

 

底板のねじ止めがかなり難易度高い。ガスケット受けに六角スペーサーを入れて位置をだいたい合わせておく。底板を嵌めたらM2ねじで16か所を止めるのだが、その時にスペーサーの位置がうまくないとねじが入らない。最悪なのは、ねじを入れようとしたら手元が狂ってスペーサーの位置をずらしてしまったり90度回転させて穴が横を向いてしまったりすること。底板を取らないとスペーサーの位置や向きを直せないので取り付け作業が振出しに戻ってしまう…。つまり16個のねじをミスなく取り付けないといけない。底板を透明アクリルで作ったのでスペーサーの位置や向きを目視できるしだいぶましなのだが、これが不透明な素材だと地獄。いったい誰だ!こんな組立の難しいものを設計したのは。

 

底板取り付けの難しさはあるが、最終的にちゃんと箱になったしねじも全部入ったし目立った歪みもない。なかなかいい出来だと思う。

 

さて、あとはスイッチをはんだづけすればキーボードになる。それについては次回の記事で。

 

プレートレスPCBガスケットマウント自作キーボードの製作(4)

今回はアクリルケース製作についての記事です。

アクリルケース部品のやすりがけ

アクリル接着を行う前にノコカット面をきれいにしする。やすりがけしてピカールケアーで磨くと割といい仕上がりになる。全部やるのは大変なので完成したときに表に来るところだけ。

 

この加工は業者にお願いすることもできる。実は試しに1か所だけ磨き加工をしてもらうように発注してみた。下図はノコカット面と磨き加工をお願いした面の比較。やっぱりプロの仕事はきれい。費用を気にしなければ全部お願いするのが楽ちん。

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ノコカットと磨きを依頼した場合の端面の違い

1か所だけしか磨きを頼まなかったのは費用をケチったのもあるが、自分は磨く作業はわりと嫌いじゃない。無心になって没入できるので(でもたくさんあるとシンドイ)。現代社会のあれこれを忘れて磨く処理をした面とノコカットそのままの面の比較を示しているのが下の写真。写真では粗がわからない程度にはきれいにできる。

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ノコカット面をやすって磨いた場合とノコカットのままの端面(手前の面)の比較

また上の写真のパーツの角の切り欠き部分には、別の板がつくことになるのだが、加工上どうしても小さいRがついている(R=0.3)ので少しやすりがけをしてピン角に近づける。

 

磨いた後は食器用中性洗剤で洗う。面取りしていないとアクリルといえどかなり角が鋭いので指を切らないように気を付ける必要がある。が、また指を軽く切ってしまった。スーパーなどに行ったときにコロナ対策でアルコール消毒すると傷口が痛い…。

 

アクリルケース部品の接着

端面の処理が終わったらいよいよ接着。まずはケース側面の4面、上面の板、ケース奥側の角のガスケット受け2つを接着する。部品をぴったりとつけた状態でセロテープで固定する。この作業をいかに丁寧にやるかで仕上がりが変わる。

 

接着は一発勝負。深呼吸の後にアクリル接着剤をシリンジでパーツ境界に流し込む。ガスケット受けはセロテープでは十分固定できなかったので指で押さえながら接着。使ったシリンジが太くて(φ1mmくらい?)ポタポタ垂れてやりづらかった。もう少し細いのがベター。アクリル接着剤は皮膚につくとピリッとするし危険なので、ポリ手袋を着用して部屋の窓を全開にして作業をおこなった。

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アクリルをセロテープで仮止めして、アクリル接着剤をシリンジで接着面に流し込む

ケース角のガスケット受けがつけられたら、真ん中2つのガスケット受けも接着。ガスケット受けの位置合わせをPCB基板を当てながら目で見て合わせてしまったが、底板のねじ穴のほうが遊びがないのでそちらで位置合わせをするべきであることに接着後に気づいた。ねじ穴がちゃんと入るか冷や冷やしたが、接着後に確認したらねじが全部入ったので良かった。

 

ケース手前側のガスケット受けも同様に接着。ただしこちらは上面の板がアルミ。ケース前面とガスケット受けの上面が合うようにしたいので、アルミ板も一緒にセロテープで一時的に固定する。アクリル接着剤ではアルミ板はくっつかないのでガスケット受けがくっついたら一度外して別の接着剤であとからつけることになる。

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8個のガスケット受けの接着が完了



USB基板固定部品

USBレセプタクルは別の小さい基板を実装してあるが、この基板をケースに固定する必要がある。ELECROWに頼んだガスケット受けが大量に余っているので、これをノコでカットしてM2のタップをあけて接着する。この部品は小さくて手で押さえながら加工は無理だなと思ったので、前から欲しいと思っていたバイスを購入した。バイスがあると非常に作業がやりやすい。デメリットは重くてでかいので収納に困ること。この固定部品は設計時に手を抜いた部分だったが、えいやっと作った割には高さぴったりで良い出来となった。

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(左)USBレセプタクル基板固定用のアクリルパーツ、(右)USB基板を固定した様子

後はケースの底板を組み合わせればケースはほぼ完成。続きは次の記事で。

プレートレスPCBガスケットマウント自作キーボードの製作(3)

今回はPCBのはんだ付けなどについての記事です。

PCBのMCUのテスト

まずはんだ付けに一番気を遣うMCU(ATmega32U4)をつけて動作確認を行う。USBでPCと接続するためにUSBのD-、D+、VBUS、GNDのラインとセラロック、容量が1μF以上のコンデンサもはんだ付け。そしたらPCにUSB接続して認識されるか確認する。デバイスマネージャーでATmega32U4が見えていればOK。

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MCUとUSB接続に必要な素子をはんだづけしてテスト

はじめ「不明なUSBデバイス(デバイス記述子要求の失敗)」となって認識されなかったので焦った。新しく導入した素子のつなぎ方を間違えたのかと思ったが、原因は1μFのコンデンサを省略していたせい。これをつけたら無事認識された。つまり0.1μFのコンデンサはなくても動くのだけれど、まあでも一応つけておく。

 

PCBのキースイッチ回路の確認

MCUが認識されたらファームを書き込んでちゃんとキースイッチの回路が動作するかを確認する。たくさんあるスイッチとダイオードをはんだ付けしてからミスに気付くと悲しいので。金属製のピンセットで1個ずつ導通させ、PCで入力されるかをチェック。こちらも無事に動作することを確認。

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キースイッチの回路が問題ないかどうかをピンセットで導通させて確認する

スイッチのフットプリント位置がずれている…

以上が確認できるとPCBはOKと思うものだが、なんとなく嫌な予感がしてPCBをよく観察していたら、6uスペースキー用のスイッチの位置だけずれていることに気づく…。ま、まぁ、こんなこともあろうかと分割できるようにしていたんだもんね(たまたまです)。初めてPCBを作った時も似たようなミスをしたけど、どうすればズレがないことを確認できるんだろうか?誰か良い方法を知っていたら教えてください。

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6uのスペースキーのスイッチの位置がずれている

 

ということで、6uのスペースキーではなく1u、2u、3uの分割にすることに。そのためには3uのスタビライザーのワイヤーを手に入れる必要がある。最近では遊舎工房で購入できるでありがたい。使おうと思っているDUROCKのスタビライザーに適合する太さなのかちょっと心配。

 

まあでも(他に気づいていないミスがなければ)使うことはできるので気を取り直してダイオードのはんだ付け。

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ダイオードのはんだ付け

使用するキースイッチは現在選定中。一度はんだ付けすると外すの面倒なのでキメラスイッチは使わない方針。個体差によってスイッチ接点に問題が起こったりするからだ。いくつかのスイッチを少数だけ買って試しているけど、おかげでまた家の在庫スイッチが増える…。5個とか10個だけとかのスイッチは、いったいどうすれば整理できるのだろうか(同じ問題が工具や本でも起こっている)。広くて収納がたくさんのアトリエが欲しい。いやまてよ?部屋が狭いからだいぶ抑制できているのかもしれない。

 

次の記事ではケースの組立について書く予定です。