今回は作成した自作キーボードの打鍵感・打鍵音の評価についての記事です。
フォースカーブの測定
今回のキーボードはスイッチプレートがない分かなり打鍵感が柔らかい。これを客観的に確かめるため、自作したフォースカーブ測定機を使ってキーボードにスイッチをつけた状態でフォースカーブを測定してみる。下図は今回製作したプレートレスPCBガスケットマウントのrelief64と過去に製作したキーボードの比較。測定したキーは矢印キーでスイッチはどちらもGateron yellow milky (proではないやつ)。relief64だけはPCBにはんだ付けされているのでスイッチ個体が異なる。
フォースカーブ測定機専用のアクリル製のスイッチテスターやアクリルトップマウントの自作キーボードchex71は押し下げ切った後の荷重が急激に上昇する。これに比べてガスケットマウントの2つはそこの勾配が少し緩やかになっている。今作のrelief64は以前作ったガスケットマウントのchex71よりも緩やかになっている。
relief64をタイピングするとPCBがバインバイン振動しているのを感じることができる。まあでもこの表現は大げさかもしれない。指でゆっくりと押すと確かにグッと沈んで柔らかいことは感じることができるのだが、タイピングの速度でキーを軽く押しても大きく沈むわけではない。実際フォースカーブは底打ちの部分以外は同じになっているので、ある程度強く打鍵する場合に底打ちの柔らかさを感じることになっているみたい。
さらに柔らかくするならPCBの厚さを1.6mmよりも薄くすればよい。ただしその場合は底板とたわんだPCBがあたらないように注意する必要がある。あるいはガスケットのフォームの面積を小さくすると柔らかくすることができる。
真鍮ウェイトの加工・取り付け
今作のキーボードの底板はアクリル3mm厚でそれほど厚いわけではないので、ここが振動して音が響くことがあり得る。底板の防振のために真鍮製のウェイトをつけて違いを見てみる。真鍮ウェイト用の板材はモノタロウで調達。切りっぱなしの真鍮板に固定用のM3タップ穴をあける。穴をあけたら面取りを行い、やすりでやすった後にピカールケアーで磨いて仕上げる。
出来上がった真鍮ウェイトを底板に固定する。やっぱりウェイトをつけるとテンション上がる。
キーボードの重量をチェック。ウェイト取付前は687.5g。これまで自分が作った自作キーボードの中でもかなり軽いほうであったが、ウェイト取付後は重量が1225gに増加。これくらいだと片手で無理せず持てて重すぎず軽すぎずの重量となるので普段使いには程良い気がする。2kgを超えてくるとどっしりしてかなり安定する一方、重いから少し扱いづらい。
真鍮ウェイトの打鍵音への効果
真鍮ウェイトによってどのように打鍵音が変わるかを周波数解析してみた。録音方法と解析方法は以前に書いたこの記事と同様。
スイッチがGateron Pro yellow milkyとProでないyellow milkyの2種類あるので、それらが取り付けてあるHキー(Gateron pro yellow milky)と;キー(Gateron yellow milky)について比較を行った。下図は真鍮ウェイトの有無による周波数スペクトルの違いをそれぞれのキーについて比較したもの。キーキャップはSignature PlasticのSA-Pプロファイルをつけて測定を行った。
結論として真鍮ウェイトの効果はほとんど見られない。;キーについては5-8kHzが低減しているように見えるが、これくらいの違いは打鍵時の強弱で変わる気がする。むしろこの結果は測定の再現性が良いことを示しているかも。だとしたら自分の打鍵力のコントロールを褒めてあげたいところだが…。どちらのキーも10kHzを超えたところのピークが低減しているが、耳で聞いた感じでは違いは判らなかった。
ウェイトは主に底板の振動を抑える役割だと考えられるが、今作のキーボードでは他が音の主成分を担っていると思われる。おそらくPCBとスイッチが打鍵音の主な要因であろう。底板はこれらとはフォームによってアイソレートされているので、底板はほとんど振動しないということだろうか?この考えが正しければ、ウェイトはボトムマウントの場合に特に効果を発揮するような気がする。プレートレスPCBガスケットマウントの打鍵音を低減させるためにはまずスイッチ・PCBの音を低減させる必要がありそうだ。
次の記事ではフォームによる打鍵音の変化について書く予定です。