自作キーボードの打鍵音をいろんなセットアップで調べてみた

打鍵音エンドゲームを目指して製作した自作キーボードunity69は、狙い通りにはならずにほぼ静音キーボードとなってしまいました。悪くはないのですが、自分の求めていた打鍵音ではなかったので、あれこれいじって打鍵音がどのようになるかを調べてみました。今回の記事はそのことについてのまとめです。

PCB・スイッチプレート一体型ホットスワップ自作キーボードunity69

unity69と名付けたこの自作キーボードはPCBとスイッチプレートを一体にしたもの。 スイッチに接している硬い物質を最小化し、柔らかい印象の打鍵音になることを狙った。 またスイッチのメンテナンスや交換がやりやすいようにソケットを使用してホットスワップが可能となっている。

PCB・スイッチプレート一体型ホットスワップ自作キーボードunity69

ケースはアクリルで箱組し、ケースの中ではスイッチプレートが3mm x 3枚のフォームの上に乗っかっている構造となっている (製作についてはこちらのブログ)。 キースイッチに接している硬い物質を最小化したことによってかなり打鍵音が抑えられたのだが、自分が追い求めているものとは異なる。 求めているものはこんな感じの打鍵音。 www.youtube.com

これは録音した打鍵音にローパスフィルターを通すことによって高音を低減させたもの。 この「コトコト」と籠った感じが目指している打鍵音。 unity69を改造することによってどうにかこれに近い打鍵音にできないだろうかとあれこれ試行錯誤してみた。

打鍵音の比較

8つのセットアップを比較した。キースイッチはBanana splitをKrytox GPL205G0でルブしたもの。キーキャップやケース内のフォームの量を変更したり、あえて音を鳴らすためにPCBの板を入れたりしてみた。打鍵音を録音して比較した動画はこちら。

www.youtube.com

下記にそれぞれのセットアップの詳細を記す。

セットアップ1

もともとのデザイン。キーキャップは品質が良いと評判(をどこかで見かけた)IFK 4800K。 キーボード回路部分を含むスイッチプレートが3mm厚のポロンフォームシート3枚の上に乗っかっており、これがアクリル箱組のケースの中に納まっている。 スイッチプレートの上面側を抑えるものはなく、ただ乗っかっているだけ。

セットアップ1

セットアップ2

セットアップ1ではキーボード部分がフォームを挟んでケース底板に乗っかっているだけ。これに対し、スイッチプレート上面とケースの間にシリコーンゴムシートとポロンフォームを挟んだものがセットアップ2。スイッチプレートが上から少し圧力を受けている状態となっている。

セットアップ2

セットアップ3

もともとのデザインではポロンフォーム3mmが3枚スイッチプレートの下側にある。このうちの一番下のフォームを薄い1mm厚のものにした。 これよりセットアップ5まではキーキャップがMT3 Extended 2048。

セットアップ3

セットアップ4

一番下のフォームをなくしたもの。つまりホットスワップ用のソケットがケース底のアクリル板の上に直接乗っかっている状態。

セットアップ4

セットアップ5

一番下のフォームを1mmとし、ケース底面のアクリル板に真鍮5mm厚のウェイトをねじ止めしたもの。

セットアップ5

セットアップ6

セットアップ5からキーキャップをMT3からSignature plastic製のSA-Pプロファイル(industrial)に変更したもの。ただしスペースキーはMT3のまま。 以降ではすべて同様のキーキャップのセットアップ。

セットアップ6

セットアップ7

音を鳴らすために使っていないPCBをわざわざケース内に入れたセットアップ。ホットスワップ用ソケットとの間には1mm厚のフォーム、ケース底面との間には3mm厚のポロンフォームを入れた。

セットアップ7

セットアップ8

音を鳴らすために入れたPCBとホットスワップ用ソケットの間の1mm厚フォームを除いた。ホットスワップ用ソケットとPCBが直に接している状態。

セットアップ8

まとめ

変更しては打鍵音を録音するという若干面倒な作業だったが、なかなか面白かった。この中ではセットアップ3のカラコロと鳴るのが新鮮だった。これまで自作したものにはなかった打鍵音となっていて、これはこれでありかもしれない。皆さんはどの打鍵音が好みでしょうか?


どのセットアップも自分が求める打鍵音には遠いが、このスタディで得られたことは結構多かったと思う。

  • cherryプロファイルのキーキャップの打鍵音は、品質が高い(という評判のある)キーキャップであっても自分は好きにはなれない
  • SA-Pプロファイルにすると音の圧力が大きい(気がする)
  • キーボード部を上から押さえつけると(フォームを潰すと?)音が変わる
  • キーボード部とケース底板の間のフォームの厚さによって打鍵音が大きく変わる
    • フォームの厚さが薄い場合は、ケース底板の剛性によって音が大きく左右される


フォームでキーボード部(スイッチプレート、PCB)とケースを音響的に分離するとキーボード部の音が支配的になる。セットアップ1がまさにこの状態で、使用したBanana splitもかなり底打ち音が抑えられているスイッチなのでほぼ静音キーボードになる。


ソケットと音が鳴る板(ケース底板やあえて入れたPCB)の間には1mm程度の薄いフォームを入れるのが自分の好みな気がする。入れないと音が鳴りすぎと感じる。


自作キーボードunity69ではスイッチプレートが柔らかいFR4であり、さらに通常の自作キーボードでは存在するPCBがない。加えて、使用したスイッチのBanana splitは静音スイッチではないもののかなり音が抑えられている。このような状況ではケース底板が打鍵音を決める重要な要素となる。


キーボード部を上から抑えてフォームを潰すと自分の好みの音に近いような気がする。これは制振の効果が高まるからなのだろうか?はたまた空間を埋める物質の密度が高くなるからだろうか?後者については少し試してみたいことができたので、そのうち(少しおかしな構造の)キーボードを作るかもしれません。


この記事は自作したPCB・スイッチプレート一体型のホットスワップキーボードunity69で書きました。