自分の悪い姿勢を矯正したいと考えて分割キーボードを製作しています。前回の記事ではケースの設計について書きました。 今回は基板の設計とはんだづけについて。
基板の設計
キーボード基板
ケースの設計が一通り終わったところでケースに合わせて基板の外形を書き、素子の配置、配線ができるかを確かめる。 回路図は前作のものを使いまわしすればすぐにできる。
問題はPCBエディタでの配線。だいたい自分はいつも次のような順番でものを決めていると思う。
- キースイッチ、ダイオードを配置。
- ケースに合わせて外形線を引く。
- MCUの位置をざっくり決める。スペースが空いているところに配置。
- MCU周りのセラロック、コンデンサなどを配置する。
- USBコネクタ基板とケーブルでつなぐためのスルーホールの位置を決める。
- TRRSコネクタ基板とケーブルでつなぐためのスルーホールの位置を決める。
- スイッチのRow、Columnの線を表側、裏側どちらを通すか決める。
- MCU手前まで配線。スイッチ配線のMCUのピンの対応を配線しやすいように回路図をいじりながら最適化。MCUの位置を最終決定する。
- 塗りつぶしなどを整える。
最近はGNDベタの塗りつぶしをさぼっていたけど、これをしないと配線部分のレジストが少しだけはがれる確率が増える気がする。GNDベタがないと配線部分が少し高くなる。複数の基板が重ねて梱包されているので、配線部分が擦れてレジストがはがれやすいのではないか。だとすればGNDベタの塗りつぶしをすればマシになる気がする。実際GNDベタを入れた今回の基板で配線のレジストがはがれているものはなかった。たまたまかもしれないけど、GNDベタをしたほうが良さそう。まあでもGNDベタなくても配線切れてたことはないので気持ちの問題。
TRRSドーターボード
今回はTRRSドーターボードも作る。 とてもシンプルなので設計は簡単。ネジの頭の寸法を気にしてできるだけ小さくするだけ。まあ安いので最悪失敗してもいいやの精神でサクッと設計完了。
USBドーターボード
以前作ったUSBドーターボードを流用。こういうのは一度作ると使い回しがきく。
基板が到着
ELECROWにキーボード基板、TRRS基板を発注。TRRS基板は5枚でも10枚でも値段変わらなかったので10枚で発注。届いたのがこれ。たくさんあってもはや数える気にならない。これでしばらく分割キーボードを自作するのに困らない。(まあ今作をエンドゲームにするつもりなのでもう使わないかもだけど)
基板へのはんだ付け
ケースやスイッチプレートと仮組みして問題ない無いことがわかったら、基板のはんだ付けを行う。 (実際はケースに一部問題があって修正した。これについては次回の記事で。) まずはMCUがPCに認識されるために必要最低限の部品をはんだ付けしてテスト。 それが終わったらソケットとダイオードをつける前にファームウェアを書き込んで動作テストを行う。問題なければ残りの部品をすべてはんだ付けし、最終チェック。
動作チェックも完了してよし!と思ったら、一か所はんだ付けを忘れているところを発見。こういうのは毎回はんだごてを片付けた後で見つかる…。
Windows PCの電源投入時にキーボードが動作しない問題
前作の分割キーボードはなぜかWindows PCにUSBでつないだ状態で電源を投入したときにキーボードが効かない、という問題があった。 同じことが今作の分割キーボードでも起こった。 USBを一旦抜いて挿し直せば動作するものの、だいぶ面倒くさい。 明らかに自分の作った何かに問題がある。 X(Twitter)でこの問題をつぶやいたら以下の記事を教えてもらえた。
この記事はRP2040についてのもので、自分の使用しているMCUはATMEGA32U4だけれど、この記事のSPLIT_USB_TIMEOUTが大いに関係していそう。
他のキーボードのファームを参考にしてみると、config.h内で定義しているものがあった。2500と設定されているものが何例かあったので真似してみたが、これではダメだった。一方5000にしたら問題が解消された。後はどれくらい短くできるかを調べていき、結局3500にした。
また左右に同じファームを書き込んでいたが、そうするとなぜかMaster側(USB接続側)は反応するけど、Slave側は反応しなくなる。結局ファームウェアは左右別々にし、SPLIT_USB_TIMEOUTはMaster側にだけ書くことでうまく行った。
スタビライザーの取り付け
スタビライザーの調整はいつも手間がかかって上手くいかないと辛い。 何が原因なのか、理解したくてよく観察してみた。
これでわかったのは、スイッチのステムにぐらつきがあって前後すると、キーキャップを通じて一体となっているスタビライザーステムとワイヤーの位置関係が変わる。これによって、スタビライザーステムとワイヤーの間に隙間ができたりできなかったりするので、これがカチャカチャ音の原因になっていると思う。一方で上面から見て左右方向のグラつきはさほど問題にならない気がする。
カチャ音の対策としては
- ステムのぐらつきの無いスイッチを使う
- スタビライザーステムとワイヤーの間の隙間を何かで埋める
等が考えられる。スタビライザーのハウジング・ステムの遊びがないほうが良いのではないかと思ったが、キーキャップが歪んでいることも少なくないので、あまりに遊びがないとそもそもキーキャップがつかないことがあるのかもしれないなぁと思った。
YouTubeとか見てると、ワイヤーの歪みを調整していることがあるけど、これはキーキャップが歪んでいないことが保証されていないと意味がないと思う。
自分はPBTのキーキャップを好んで使う。
PBTのキーキャップは歪んでいるのが当たり前と思っているのでワイヤーの歪みの修正はいつも行わない。
結局以下の処置を行った。
- Holee Mod
- PCBにKBDfans Stabilizers foam stickerを貼る
- スタビライザーに付属していたシールをステムの下側、ワイヤーの下側が当たる部分に貼った
最後の処置は今回初めて行った。DUROCKのスタビライザーを買うと、最近ではステムに貼る小さなシールがついてくるみたい。Holee Modのバンドエイドに加えてこのシールをステム下側に貼ると、ワイヤーとスタビライザーステムの間の遊びはなくなる。
これらの処置で打鍵音はいい感じになった。
今回はここまで。次回はケースの塗装について書こうと思います。
この記事は自作分割キーボードPosture3338で書きました。