プレートレスPCBガスケットマウントの自作キーボード製作についての記事です。
製作をしようと思ったきっかけ
2021年8月、EQUINOX XLとTHERA75のGroup Buyに参加するかどうか迷っていた。これらのキーボードではプレートレスPCBガスケットマウントを採用している。この特徴により、
- スイッチプレートがなくPCBのみなので打鍵感が柔らかくなる
- スイッチプレートがない分フォームを厚くして大きな吸音効果
が期待できる。これまで自作してきたキーボードは、スイッチの交換がしやすいようにすべてソケットでホットスワップにしていた。ただそうするとどうしてもスイッチを固定するためにスイッチプレートが必要となる。プレートは打鍵の硬さや打鍵音に大きな影響を与えるので、これがなくなったらどうなるのかとても興味がわいた。
EQUINOX XLはいつも魅力的なキーボードを生み出すai03さんが設計したもの。自作キーボードを嗜んでいる人ならai03さんのキーボードを1つは手にしてみたいと思うもの。また欲しくなった理由がもう一つある。自分が40%キーボードを設計していた際、キーキャップに困った。Rowで形状が異なるプロファイルだとRowの不一致が起こるし、印字までそろえるのは難しい(というか不可能?)。そこでコンパクトさを少し犠牲にしてよくあるキーキャップを使えるようにはどういう配列にすれば良いか、というのを考えたことがあった。
雑に並べてみたけれど長いな…
— 機嫌を損ねたシェフ (@kgnwsknt_chef) 2021年6月12日
まあでも横長と感じるのは既存のキーボードによる先入観か pic.twitter.com/J5V0RAdDJS
そんなことを考えた直後にEQUINOX XLの発表があったのでこれは運命ではと思っていた。
もう一つのGBされていたキーボードのTHERA75はEQUINOX XLに比べてサイズが大きめ。こちらにもっとも魅力を感じたのは5mm厚のフォームを使用している点。よくあるフォームはPCBとスイッチプレートの隙間を埋めるもので3.5mm厚程度であるのに対し、THERA75ではスイッチプレートがない分厚いフォームになっている。これにより大きな吸音効果が期待される。いくつか打鍵動画を見たところ打鍵音は自分好みのコトコトと落ち着いた感じでよさそう。
これらの非常に魅力的なキーボードのGBに参加しようかかなり悩んだが、最終的な結論としてはGBには参加せずに自作することにした。だいぶキーボードが増えているので、ある時から実際に使用するものだけを手元に置くということにしている。EQUINOX XLのキー数はやっぱり自分には少ないので普段使いにはならないし、一方THERA75のファンクションキーは自分には不必要で無駄に大きい。足して2で割ったくらいのサイズがちょうどいいのだけれど、どうしていつも自分の欲しいものは世の中に存在しないのか…。ということでなければ自分で作るという(いつもの)パターン。
キー配列
まずはKeyboard Layout Editorで配列を考える。基本はRow staggererd配列で、まだ自作したことのない60%か65%サイズでつくる。矢印キーは欲しくて、右シフトも残したいなと思うと65%サイズになる。というのをもとに考えたのが以下のキー配列。
結果としてあまり特徴のないキー配列になっているが、へそ曲がりなのでちょっと変化球を加える。
通常BSなどの右にキーが並ぶが、そうすると世の中にある65%と変わらなくなってつまらない。あえてキーは配置しないことにした。ここにはブロッカー的な蓋をしておいて、気が向いたらOLEDでも入れようかなと。自分にもっと美的センスがあればこのスペースに何か装飾的なものを配置するのだが…
スペースキーは6uまたは、1+2+3uの分割とした。スペースが6.25uでその右のAlt、Fn、Ctrlは1uで並べるというのがよくある65%の配列な気がするが、スペースを分割したときに「B」の真ん中で割りたいというのと、なんとなく使ったことのない6uのスペースにしてみたいという理由でこうした。6uにするとその右に0.25u余裕ができるので、右Alt、Fn、Ctrlのうち一番自分の使用頻度が高いFnの幅を1.25uにした。
設計を始める前に名前を考える
設計を始める前に名前を考える。これ決めないとファイル名とか整理しづらい。いろいろ考えたけれど、スイッチプレートに窮屈そうに束縛されていたスイッチを解き放つ、ということから連想してrelief64という名前にすることにした。
この続きはまたそのうち。