キーボード打鍵音の周波数解析(その2)

夏休みの自由研究としてキーボード打鍵音の周波数解析を行ったが、キーキャップのプロファイルによる違いを見るのを忘れていたので追加で調べた。前回と同じマイクで録音して同様の解析を行った。前回の解析法と結果の詳細についてはこちらの記事。

 

kgnwsknt-chef.hatenablog.com

 

スイッチ+キーキャップのみの場合の周波数スペクトル

スイッチとキーキャップのみの打鍵音をまず調べてみる。スイッチを指で持ってキーキャップを打鍵した音を録音。これを家にあったいろんなプロファイルのキーキャップ(すべてPBT)について行い周波数スペクトルの比較を行った。用いたスイッチはGateron Ink BlackのハウジングにUHMWPEステムを入れてルブしたもの。図は結果をまとめたもので、背が高めのプロファイル(MT3, SA, SA-P)は寒色系の点線で示してある。

f:id:kgnwsknt_chef:20210822170200p:plain

スイッチ+キーキャップのみの場合の周波数スペクトル

これを見ると、背の低いプロファイルのピーク周波数は背の高いプロファイルに比べて高音側に寄っている。これは背が低いと打鍵音が高く感じるという体感と一致する。ただしプロファイルによる違いはそれほど大きくなく、メインの成分は4-8kHzの範囲に分布している。

 

キーボードに取り付けた場合の比較

次はキーボードに取り付けた場合について調べた。使用したキーボードは真鍮プレートの40%キーボードhaze46(詳細は前回のブログ)。

f:id:kgnwsknt_chef:20210822170231p:plain

キーボードに取り付けた場合の周波数スペクトル

これ見ると、スイッチ+キーキャップ単体の場合に比べてプロファイルによる差が小さくなり、どの場合も似たようなスペクトルの形になっている。前回の周波数解析の結果をふまえると、真鍮のプレートが打鍵音を決めているのかもしれない。

 

実際の打鍵音はキーキャップによって少し違うように感じる。強いて言えばスペクトル上では背の高いキーキャップ(MT3, SA, SA-P)は1kHzあたりが少し大きめになっていて、これが実際の音の違いを示しているのかもしれない。

 

一方スイッチ+キーキャップ単体で測定したときには背の高いプロファイル3つは1kHzあたりはむしろ小さかった傾向がある。キーキャップにスペクトルに違い(=音色の違い)が現れるというのは良さそうだが、プロファイルよってどの周波数に変化が現れるかは、スイッチを嵌めているプレートなどに依存するようだ。

 

まとめ

キーキャップのプロファイルによる打鍵音の違いについて調べたが、キーボードに取り付けるとスペクトルの違いはわずかだった。打鍵音はキーキャップよりもスイッチプレートやケースの要因が大きいのではないかという印象を受ける(もちろんスイッチによっても大きく変わるはず)。ただし、実際に耳で聞く打鍵音には違いがあるので、周波数解析でキーキャップのわずかな違いを調べるのは向いていなさそう。今回使用したGateron Ink Black +UHMWPEをルブしたスイッチは打鍵音が比較的おとなしいが、底打ち音を軽快に鳴らすようなスイッチでは違う傾向になるかもしれない。

 

しかし家にこれだけの種類のキーキャップが存在していたことにちょっと驚いている。キーキャップの購入は抑制的であったつもりだったのだが…。