分割型キーボードの自作(1)

分割型のキーボードは自作ならではの形態。それなりの数のキーボードを自作してきた割には分割型のキーボードをこれまで触ったことすらなかったので、設計して作ってみることにしました。今回からこの分割キーボードについて記事を書いていこうと思います。今回は主にキー配列について。

 

動機

日本では自作キーボード=分割キーボードといっても過言ではないほどたくさんの自作分割キーボードがある。その割には自分は分割キーボードを触ったことすらない。日本人たるもの分割型キーボードに触れてみなくては自作キーボードを嗜んでいるとは言えないのでは、と頭の中で誰かが囁く気がするのです。

 

というわけで分割キーボードを自作してみることにした。分割キーボードは自然な姿勢になる、肩こりが取れるというようなことが言われている。自分は肩こりは全然ないものの猫背がひどくて姿勢が悪い。最近は運動不足もあってかさらに姿勢が悪化しているなと感じているので、分割型のキーボードを使うことによって姿勢が改善することを期待。

 

分割キーボードの自作キットはとってもたくさんある。自分に合いそうなものはないものかと、まずはRemapカタログを眺めてみる。NKNL7EN、Acperience70、mint60はかなり自分の求めているものに近いのだが、後述するようにBキーが左右両方にあって欲しいのでちょっと求めているものとは違う。結局いつも通り自分で設計することにした。

 

キーレイアウト

方針

普段使いとしてしばらく(少なくとも1か月くらい?)使用してみて、分割キーボードで姿勢が良くなるのかを試したいというのが一番の動機。あんまり攻めたキー配列にして使いづらいようでは使い続けることができなくなってしまう。そこで、現在自分のスタンダードとして使用しているRow staggeredの68キーの配列からは大きく変えない、というのを今作の方針とする。

 

いつもの様にKeyboard Layout Editorでいじりながら考える。キー配置は最終的に以下のようになった。

キーレイアウト

Bキー

Bキーは左でタイプするのが教科書的な指づかい。ただ自分は無意識に左右両方の指を使っている。どうも「ba」や「be」などの組み合わせの時は右手でBをタイプしているようだ。これは最近買ったこのキーボードを使っていたら気づいた。

www.amazon.co.jp普段と違うキー配列のものを使うと自分の癖に気づけるので面白い。

 

「be」とかは左手だけでタイプするのは苦痛な感じがするんだけれど、世の中の人はどうしているのだろうか?この機会に教科書的な指づかいに矯正するという考え方もあるけど、右にBが無いとイライラしそうな気がしたので現在の運指を保てるように右にもBを配置することにした。6については頻度が少なくてどちらの指を使っているのかわからないけれど、Bと同様にとりあえず左右両方に配置しておく。まあ使わなければスイッチ外してブロッカー置いておけばいい。

 

矢印キー・Deleteキー

矢印キーとDeleteキーはデフォルトレイヤーに欲しい。自分が愛用している68キーの配列ではよくあるテンキーレスのキーボードのように右側に配置している。ただ、単純にこの68キーを分割すると右側のキー数が多くなってしまって左右の大きさのバランスが悪い。これを避けるために、矢印キーについては以前自作したほぼ60%サイズのキーボードと同様に右下に詰めて配置する。また矢印キー隣にFnを配置し、組み合わせてPage Upなどにする。以前自作したほぼ60%キーボードでFnキーの位置がLeftキーのすぐ隣になかったのが使いづらかったので、今回は隣に配置する。おさまりをよくするために、Upは右Shiftの右ではなく左に配置する。

 

あとはDeleteキー。CADやExcelなどをいじっていると、右手でマウスを操作しながら左手でDeleteを押したくなる時がある。上で述べた68キーのキーボードのようにDeleteが右上にあるととっても押しづらい。左右のキー数のバランスのこともあるので今作では左側にDeleteを配置する。同じ場面でEnterも左側に欲しくなる気がしたので左にも配置する。これらは左端に配置。この2キーだけだと余白が広すぎて持て余している感じがあるので、さらにPage Up/Downの2キーも配置する。

 

はじめはこれらの4キーを間をEsc~Ctrlの左端にRowを揃えてピッタリつけていたが、そうするとRow staggered感が薄れる。

左端4キーをピッタリつけた場合

これを避けるだけなら0.25u隙間を空ければ十分。ただ、いろいろいじっていて気づいたが、間を0.75uにするとキースイッチ部の横幅が左右両方とも9uになる。これは左右のバランスが良いし、なによりケースのベゼル幅と外形寸法を左右で同じにできる。ケースの左右でデザインの異なる部分を減らせたほうが設計ミスを引き起こしづらくなるはず。というわけで0.75uの間隔を空けることに決定。

 

左端4キーの前後方向はあえて他の部分に対して0.5uずらす。手前側・奥側の余白のバランスということもあるけれど、0.5uずらすことでキーキャップのRow(高さ)が一致しなくても気にならなくなるかなぁという期待。

 

スペースキー

英単語のタイピングテストをしているとき、自分はスペースキーを右で打鍵している。一方で日本語の文章を書いているときには変換の時に右だけでなく左でもスペースキーを打鍵している。最近気づいたのだが、多くの人はスペースキーを左手で打鍵しているみたいで右手は少数派みたい。これ、YouTubeの打鍵動画を複数見てたらみな左手なのでふとそう思ったのだが、@k2___________さんが集計してくれたおかげで確認することができた。

 

まあでも自分は少なくない頻度でスペースを左でも打鍵しているようなので、自作する分割キーボードではスペースキーも左右両方に配置する。

 

ではキー幅をどうするか。1uのような小さいサイズは避けることにした。分割キーボードを使ったときに自分の親指がどのあたりを押すようになるのかが予測不能なためだ。なのである程度幅のあるキーにする。3uが一つの選択肢だが、キーキャップやスタビライザーのワイヤーの入手性は良くないのでこれはなし。結局スペースは他のキー幅との兼ね合いで、左右にそれぞれ2u、2.25uを配置することにした。一体型の場合、打鍵の左右位置は左親指はVBの間、右親指はBNの間辺りなので、左右のスペースキーの端がBの中心くらいまで伸びていればきっと問題ないはず。

 

あとはスペースキーのRowの他のキー幅を整える。右Altは全然使っていないのでこのキーは除くことにした。スペースと矢印の間に2キー配置するのがおさまりが良い。矢印キー隣のFnは使用頻度がそれなりにありそうな気がしたので、1uでなく1.25uのやや広めのキーにする。現在使用している68キーの配列に比べると、左スペースの左側に空きができるので、ここにはとりあえずFnを追加しておく。このFnキーは左端のキーとの組み合わせを片手で押せるようにするため。ちょっと遠いけど。押せなくはない。

 

キーキャップ問題

標準的なRow staggeredをベースにしているので、キーキャップは右Shiftの1.75uが少し特殊なくらいで多くのキーキャップセットは適合するはず。問題なのはBと6キーが2個ずつあるところ。キーキャップの印字を合わせたい場合には、これらのキーキャップがそれぞれ2個必要となる。Bが2つあるキーキャップセットは存在するが、6はキーキャップセット2個買わないと印字・Rowを一致させられない気がする。ケチな自分はそんな贅沢はできない。ここは目をつぶることにする。

 

キーボードの名前

設計に取りかかる前にこのキーボードの名前を考える。今回のキーボード自作の一番モチベーションは姿勢を良くしたいということ。最初、open your chestの頭文字をとってOYCにしようかと考えた。ただ、読み方がオーワイシーとなって読みづらいし憶えにくい。そこでopyc(オーピック)とすることにした。石油輸出機構感があるような気がしなくもないけどまあ良し。左右のキー数もつけてopyc3437という名前に決定。

 

 

記事が長くなると推敲が大変なので今回はここまで。次回はPCBの設計について書こうかなと考えています。

 

この記事は自作分割キーボードopyc3437で書きました。