なぜ自家昇華印刷なのか?
最近40%キーボードを自作した。とてもコンパクトでキー数の少ないキーボードを好む人々の気持ちがわかった気がする。しかしキーボードにこだわって愛着がわくとキーキャップもこだわりたくなるもの。作ったキーボードの配列は以下のようなもの。
この配列ではキーキャップに関してこれらの点に困る。
- 市販されているキーキャップだとModifierの印字は一部無視しないといけない
- Rowで高さが変わるキーキャップだと、Q列のBackspaceなどサイズが適合するものが見つけられない
- fn1、fn2と組み合わせる入力の配列は独自のもので、これに適合する印字のキーキャップが世の中に存在しない
これらは(Plank以外の)40%サイズのキーボードではおそらく共通の悩み。fnと組み合わせた入力については常用していなければ忘れてしまうので、これらも印字されていてほしい。
そこで自家昇華印刷。キーキャップはどのRowでも同じ高さのDSAプロファイルを使うことにした。TalpKeyboardでブランクキーキャップを調達。1uだけでなくいろんなサイズがそろっていてConvexキーもちゃんとある。これらを国内で買えるのでとっても助かる。
印字データの作成
さて、どういう印字をしたもんかと考える。これまで購入してきたキーキャップセットであった不満は以下のようなもの。
- アルファベットの印字がフォントサイズ大き目
- アルファベットはセンターに印字されているものが結構多い
- Modifierキーの文字はアルファベットに比べて小さいフォントサイズになっているので、ちょっとバランスが悪い感じがする
(もちろんこれにあてはならないものもある。例えば高級なGMKのキーキャップについては、初めの2点は当てはまらないが、自分はテカテカしてくるABSは嫌&cherry profileの打鍵音が好みでない、ということからGMKのキーキャップ購入したことがない…。)
これらの不満を解消すべく印字するデータを作成する。印字データはInkscapeで作成した。Inkscapeから直接印刷しようとするとエラーになったので、一旦PDFに出力してから印刷した。PDF出力前に左右を反転させるのを忘れずに。下図はInkscapeで作成したデータ。
印字の位置
アルファベットキーについてはフォントサイズはやや小さめにして、キーキャップの中央でなく左上に文字を配置することにした(図は左右反転しているので右上に来ている)。「,」などのキーはShiftを押したときに入力される「<」も印字されている。ただし、キーキャップによって、それらが上下に並ぶものもあれば、左右に並ぶものもあり、また「<」「,」の上下左右の順番も異なるみたい。おそらく一番例が多いと思われる上下の並びで「<」を上に配置することにした。
fnと組み合わせたときの入力については、Vortex coreの印字が前々からクールに感じていたので側面に印字することに決定。フォントサイズは小さめにする。
印字する文字の太さの調節
キーキャップ全体の調和を取るには、アルファベットキーとModifierとで線の太さ、印字の大きさをできるだけそろえるのが良いように思う。個人的にはMBK Legendキーキャップのアルファベットと記号のModifierの組み合わせがバランスが取れていていいと思う(GB未参加だけれど…)。この線の太さのバランスを意識して印字デザインを考えた。
転写紙に印刷するときのプリンタの設定
プリンタはEPSONのPX-105を使用しているが、印刷時に用紙の種類と品質を選べる。用紙の種類はこれまでずっと写真用紙を選択していた(だって普通紙よりもきれいにできそうな感じがするじゃないですか)。ただ、写真用紙にするとどうも黒色が赤みがかるので、他の用紙種類を試した。
結論は普通紙で良い。品質は普通からきれいに変更する(品質を変えてどう変わるかは比較していないので不明)。
転写する文字の位置調整
自家昇華印刷で大変なのは、キーキャップと転写紙の位置合わせ。これを行いやすくするためにトンボ(カット位置を示す角の印)をつけた。グリッドを利用して文字の位置を合わせるのが必須。上のデータでは8x8グリッドのサイズで1辺10.58mmとなっている。これはDSAの天面の四角11.5mmより少し小さめ。
印刷後にトンボの位置で1つずつカットする。トンボの線の真ん中でカットすると四隅に少しだけ黒が残るので、転写時に移らないように角を少しだけカットしておく。カット後に転写紙をキーキャップに耐熱テープで固定する。この時に転写紙とキーキャップの端の隙間が4辺でそろうように位置を合わせればよい。人間の目は結構感度が高いので、丁寧にやればかなり精度よく位置を合わせられる。これを黙々と丁寧にやる。根気がいります。
いざ熱転写
転写紙をテープで貼り付けたら準備完了。あとは熱を加えて転写する。熱転写にはこの自作熱転写機を使用した。
完成!
完成したキーキャップを取り付けた完成版40%キーボードはこちら。
かなり満足度の高い仕上がり。いくつかのキーは黒いポツポツがあるが、これは転写紙に印刷するときに汚れてしまったのかもしれない。この点を気を付けると完璧となる気がする。Windowsキーはなんかオリジナルな印字をと思ったけどいまいち思いつかなかったので、遊びで作った錯覚キーキャップをつけた。
かなり満足のいく仕上がりのキーキャップができました。めでたしめでたし。気が向いたら自作した40%キーボードの作成についてもブログを書くかも。